古本屋が、古本屋の漫画「本なら売るほど」を読んだらめちゃくちゃ面白かった話
目次
古本屋を描いた漫画が出たらしい
何かを好きになるとということは、傷つくということ
「 古本屋の漫画がでたんですよ 」
と帰り際に言ってきたのは、近いうちに古本屋として独立予定の男の子だった。
「へー!面白いんですか?」
と私がいうと
「本なら売るほど、ですよね?面白いですよ」
と他の人が入ってくる。
皆んな本当、いったいどこからそうゆう情報を仕入れて来るのか。
不思議なほどに、あらゆることを知っている。
「 いや、それが面白くて、今度もってきますね 」
と言った彼は、古い漫画をたくさん集めた古本屋さんを開きたいようで
「これ、面白いんで、よかったら」
と、帰り際にたまに貸し出してくれるその漫画たちは
どう考えても女性に貸すべき内容ではないハード・エロなものが多く
「何がよかったら、だよ!」とキレ気味に返しながらも
どこがどう良かったか詳細に伝えるのがお決まりの流れになっている。
( 一見ハードでも、どこかに本質が流れていそうな気配があるものが多い。)

これは本当に、普通に面白いですから
次の出勤日、彼がそう言って手渡してくれた漫画の表紙を見てみると
それはずいぶん爽やかなイラストで描かれており
( え、この人こういうのも面白いと思う感覚あるの! )
と、そこそこ失礼なことを思ってしまう。
「古本屋で働いてるなら読んだほうがいいですよ」
とまで言われてしまったものだから
は、はい( `ω´ )ノ
と、とりあえず持ち帰って読んでみたところ
これが本当に面白かったので是非とも紹介させて下さい^^
( できるだけネタバレは無しでいきたいと思います )
何が面白いって、そこにはちゃんと古本屋のリアルな現状と
何かを好きになるということには、どうしたって付いてくる
痛みのようなものが描かれていたのです。
古本屋のリアル

古本屋というと、なんだか本が好きな人たちが集まって
ワクワクしながら買ったり売ったりする
“ 物語と出会う場所 ”のように思えたりするけれど
実際は、疎遠だった家族が急に亡くなって
自分のものじゃないし、本にも対して興味はないけれど
「あっても困るし、お金になるなら」
と、持ち込まれるケースも多いのも実情。
その場合、ほとんどは本を捨てにくる場所であり
いらない本と引き換えにお金をもらえる場所としての需要なので
実際に働いてみると本当にあらゆる場面で
人間の見たくない部分も一緒に見えてしまうのも
この職業の大事な一部だったりするのです。。
描かれているのは本よりも、人の心
そしてこの漫画の、一番魅力的だなと感じたところは
1巻にもちらりと登場するのですが
ただただ本が好きな人は決して偉ぶらないように
この漫画そのものも、有名な文学作品などを
オシャレに解説したりするわけではなく
そこに描かれているのは、あらゆる人間の「シンプルな心の動き」がメインであり
そこには、人生経験豊富なおじいちゃん店主が
思わずハッとするようなことを言って
誰かの人生を変えるみたいな、劇的なストーリーはなく
主人公は、ただただ本好きで古本屋を始めた若い男の子で
目の前の人や、起こった出来事に対して静かに思うことはあっても
誰のことも変えようとしないリアルな距離感が、読んでいてとても優しい。
(短編ストーリーが繋がっていく構成も、とても読みやすいです。)
何かを好きになるということは、傷つくということ
そしてこれは、読んでいて私が勝手に思ったことなのですが
やっぱり、誰かや何かを好きになるということは
傷つくこととセットなのだと思いました(´ ・ ω・` )
好きになるって、そのことを知っていくということだから
それが恋愛だったとしても、仕事だったとしても・・・
そこには必ず、どこかで痛みが走る。
( あらゆることは、自分の知りたいことだけでは出来てはいない )

でも、好きになるって狙って起こるものではないから
それはもう、起こってしまったら仕方のないものだとも
個人的には思っています。笑
大人になるとあらゆることでバランスを取るのが上手くなっていくけれど
やっぱり最後は、自分で自分を騙せないことを知っているのもまた人間。
人はもろい、でもだからこそ尊い。
何かを好きになって、知って、傷つく。
それ以上に尊いことって、中々ないように思うのです。
本当の意味で持つ興味

そして誰かや何かに傷ついたとき
はじめて人は、自分以外の人に
本当の意味で興味を持つのだとも思います。
「みんなどうやって生きてるんだろう」って。
そしてその生き方の手応えみたいなものが欲しくて手を伸ばすのが
本であり、映画であり、絵画であり、音楽・・・
あらゆる芸術作品であり、表現なのだと思います。
こんな人がいるんだ、こんなふうに考えてもいいんだ。
あれ、これって持っちゃいけない感情じゃなかったんだ。
なにこれ、意味わかんない不思議すぎる。
そういった世間の正解じゃない、自分だけの正解。
そういうものが、どんな人にも、必ずどこかにはあって
それを見つけられるかもしれない可能性を秘めてる場所の一つが
“ 古本屋 ”なのだと思います。
本は、どこでもドア

「本って、どこでもドアじゃないですか」
昔、読書会で知り合った50代の男性がそんなことをいっていたのを思い出す。
だって、どこにでも行けちゃうわけですから。
家にいたって、電車の中だって。
綺麗な景色も、真っ暗な独房も、知らなかった世界のことも。
現実では理解されない、あらゆる感覚や出来事も
本の中では許される。
脳内ショートトリップ。
いや、だからって、現実問題がね、いきなり解決するわけじゃないんですよ。
でも、たまにあるんですよね。
これ!
そうだ、俺が引っ掛かってたのってこれじゃん!っていう
感覚の答え合わせみたいな瞬間が。
そういう時、なんかすごく救われる気がするんです。
首がもう、もげるかと思うほどうなずいていた。
そうですね、本はどこでもドアですねって、ちょっと泣きそうになった。
そう、どんな人にでも、どこかには用意されている。
その時の自分にぴったりの、どこでもドア。
きっとこの世界のどこかには
いつかどこかで、自分と同じような感覚で葛藤した不完全な生身の人間が
いつかの誰かを救いたいと思って残した
いろんな形の物語の扉が、隠れている。
そんな物語の扉が、たくさんある場所の、これまた物語。
本なら売るほど、ぜひ一度ご愛読くださいませ^^
